小説

雨音

「うわ・・・」灰色の空から大粒の雨が降り出していた放課後。突然の雨に立ち尽くすヤマトの横を生徒たちは傘をさして歩いていく。出かける前に「今日は一日晴れるでしょう」とテレビの中で笑って送り出した天気予報士を信じたヤマトの手に中にはもちろん、傘…

素直じゃない人

「あのさぁ」夕焼けが差し込む職員室は昼間とは違った空気を生む。校庭で部活をする運動部の暑苦しさとは真逆の死んだ魚のような先生の目が俺を見上げた。「先生もさぁ、君に自慢できるほど真面目な学校生活を送ってたわけじゃァないんだけどさァ・・・先生で…

夜の道

11月の空はとても黒い。どこまでも遠く、吸い込まれてしまいそうな黒の中にいる月は良く目立つ。それは丸く、大きくなるほどに、強く存在を示す。そんな月も今日は生憎の三日月。細く薄い月明かりと等間隔に置かれた街灯の弱い光では、夜の道を歩くには少し…

悪夢 ※ホラー

気がつくと会社のオフィスにいた。大きな窓越しの太陽が背中をジリジリと照らしている。目の前の画面には様々なソフト、ファイルが敷き詰められている、いつもの仕事画面だった。もしかして居眠りをしたのだろうか?記述が途中で止まっているプログラムの羅列…

再会

 程よい音量で静かな洋楽が流れるおしゃれなカフェの中は、PCで何か作業をしているサラリーマンや買い物帰りの休憩として訪れた主婦、友達と甘いスイーツを食べながら仲良く談笑をしている高校生、ドリンクを片手に誰かを待ちながらスマホを操作している女…

酔っ払い

「ごぉじろぉ・・・」「・・・何ですか」「俺は、もう、ダメだぁ・・・」もう5回も繰り返したこの会話に、光子郎はため息をつく。どうしてですか?と聞くべきなのか。悩みつつも呆れつつ、酔いつぶれている太一を横目に散らかった部屋を着々と片付けていく。…