「ライブまでに死ぬ気で勉強しなきゃなぁ」
「まぁ、頑張れ。というかライブとか行くんだなお前」
「行くわよ!これでも昔、結構色んなバンドの曲聴いてたのよ?」
「へぇ?例えば?」
「最近テレビに出るようになったけど、〇〇は最初の方から知ってるし、▽△とか、□×とか!」
「割と知ってんだな」
「あとね。昔地元ですごい人気だったんだけど、解散しちゃったバンドがあるの。そのバンド大好きだったんだけどなぁ」
「なんて名前?」
「TEEN-AGE WOLVES!」
「な、、なん?てぃーん、、、おぶ、、、??」
「だから!TEEN-AGE WOLVES!!知らないの!?」
「知らねぇよ・・・」
「当時地元ですっっごい人気だった中学生バンド!ボーカル兼ベースの人がすっごいイケメンで凄かったんだから!」
「・・・はぁ」
「信じてないよねその返事は!?」
「だって、中学生バンドだろ?」
「中学生バンドだからって舐めちゃダメよ。ビジュアルだけじゃなくて音楽もすっごい良かったんだから!当時CD買ってすり減るほど聞いたんだから」
「へぇ・・・じゃあそのCD見せてみろよ」
「えっ、・・・どこにいったっけ」
「そんなバンドいたのか?」
「いたわよ!!金髪で男にしては髪が長くて・・・そう!石田くんみたいな人よ!!」
「石田みたいな?そんなアニメみたいな奴。石田以外見た事ねぇよ。なぁ?」
晴れやかな昼下がり。
一緒に昼食を食べていた友人に声をかけられ、サンドイッチを掴んだ手が止まる。
「そう、だな」
「ほら~~~~~」
「石田くんが言ったからって確証にはならないでしょ!?」
「じゃあ持ってこいよ。そのてぃーんえいじうるふるず~とかいうバンドのCD」
「言ったわね。ぜっったい探し出して持ってきてやる」
ふん!と鼻を鳴らした女性は食べ終わった弁当箱をテキパキと片付けると「待ってなさいよ」と捨て台詞を吐いてどこかへ行ってしまった。
「てぃーん、えいじ、うるふるずだって。いかにも中学生が付けそうな名前だよなぁ」
「・・・そうだな」
「そういや、お前も音楽詳しいから知ってんのか?・・・って、サンドイッチ、食わねぇのか?」
「え?あ、あぁ。食うよ」
友人に指摘され、動揺を隠すようにサンドイッチを食べる。友人はそこまで興味が無いのか「次の授業めんどくせぇんだよなぁ」っと伸びをしてスマホを触っている。
(・・・びっくりした・・・)
こんな年になってその名前を聞くとは。何も知らない友人に「中学生がつけそうな名前」とディスられたのが少しだけショックであり、恥ずかしい。
どうか、見つかりませんように。
そう祈りながらも、もし見つかってしまった時の展開を想像しながらヤマトはサンドイッチを食べ進めた。