小説

窓から差し込む光が眩しさに光子郎はゆっくりと瞳を開く。うつらうつらと揺れる思考と重たい体の原因は仕事のせいだろう。昨日も早く帰ろうと頭の中で最重要タスクとして掲げていたが、他社とのやり取りや困っている社員のヘルプに自分の持っている仕事、様々…

沖新沖

真選組隊士規則「局中法度」が最近一つ追加されたせいで、全く関係のないはずの僕の日常が少しながら変わっていった。第46条。万事屋憎むべし しかし新八君だけには優しくすべし。元々は前半部分しかなかったのが、近藤さんによる見え透いた姉上へのアプロ…

玉子焼き

「こんな真昼間に何してんでさァ。旦那ァ」見回りを理由に仕事をサボってフラフラと歌舞伎町を歩いていると、見覚えのある天然パーマが河原で座り込んでいた。沖田の声に反応すると、死んだ魚のような目でこちらを見上げている。「オメェこそ、こんな真昼間に…

雨音

「うわ・・・」灰色の空から大粒の雨が降り出していた放課後。突然の雨に立ち尽くすヤマトの横を生徒たちは傘をさして歩いていく。出かける前に「今日は一日晴れるでしょう」とテレビの中で笑って送り出した天気予報士を信じたヤマトの手に中にはもちろん、傘…

素直じゃない人

「あのさぁ」夕焼けが差し込む職員室は昼間とは違った空気を生む。校庭で部活をする運動部の暑苦しさとは真逆の死んだ魚のような先生の目が俺を見上げた。「先生もさぁ、君に自慢できるほど真面目な学校生活を送ってたわけじゃァないんだけどさァ・・・先生で…

夜の道

11月の空はとても黒い。どこまでも遠く、吸い込まれてしまいそうな黒の中にいる月は良く目立つ。それは丸く、大きくなるほどに、強く存在を示す。そんな月も今日は生憎の三日月。細く薄い月明かりと等間隔に置かれた街灯の弱い光では、夜の道を歩くには少し…

悪夢 ※ホラー

気がつくと会社のオフィスにいた。大きな窓越しの太陽が背中をジリジリと照らしている。目の前の画面には様々なソフト、ファイルが敷き詰められている、いつもの仕事画面だった。もしかして居眠りをしたのだろうか?記述が途中で止まっているプログラムの羅列…