小説

ワンドロ「両片思い」

「春だなぁ」窓の縁にもたれかかって外を眺めていた太一がボソリと呟いた。モニターから目を離して外に目を向けると、校門前の桜が少しずつ花開いていた。「そうですね。最近、暖かくなってきましたし」「そうだなぁ」光子郎の言葉に太一は上の空な返事をする…

窓から差し込む光が眩しさに光子郎はゆっくりと瞳を開く。うつらうつらと揺れる思考と重たい体の原因は仕事のせいだろう。昨日も早く帰ろうと頭の中で最重要タスクとして掲げていたが、他社とのやり取りや困っている社員のヘルプに自分の持っている仕事、様々…

沖新沖

真選組隊士規則「局中法度」が最近一つ追加されたせいで、全く関係のないはずの僕の日常が少しながら変わっていった。第46条。万事屋憎むべし しかし新八君だけには優しくすべし。元々は前半部分しかなかったのが、近藤さんによる見え透いた姉上へのアプロ…

玉子焼き

「こんな真昼間に何してんでさァ。旦那ァ」見回りを理由に仕事をサボってフラフラと歌舞伎町を歩いていると、見覚えのある天然パーマが河原で座り込んでいた。沖田の声に反応すると、死んだ魚のような目でこちらを見上げている。「オメェこそ、こんな真昼間に…