ワンドロ「料理」
「そういえば君って、料理得意なんだね」しばらく賑わっていた客足が落ち着いて最後のお客を送り出した後、閑散とした厨房で皿を洗っていた丈がヤマトに問いかけた。「あぁ、まぁ」「ずっと気になってたんだよ。小学五年生にしては料理が出来るなぁってさ。あ…
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ワンドロ「アイドルパロ」
午後9時を回った頃、スマホの画面上に現れた「LIVE:ヤマト」の通知に私は飛びついた。「嘘?今?」通知をタップしてアプリを起動するが、急に配信を始めてアクセスが集中しているのか白い丸がグルグルと回ったまま動かない。寝転がっていた体勢から起き…
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ワンドロ「ハロウィン」
今日の夜がいつもの夜と雰囲気が違うことに気づいたのは、塾が終わり、しばらく歩いた時だった。街中がカラフルに彩られ、すれ違う人々は思い思いの仮装をして街を歩いている。お化けやゾンビ、ナースや警察官などの格好をした人から、流行りのアニメのコスプ…
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ワンドロ「違う制服」
「まずい、もうこんな時間だ・・・」放課後。日直の当番を終わらせて教室の時計を見た丈は、焦った様子で荷物をまとめてクラス名簿を持つと、教室の鍵を施錠して足早に職員室へ向かった。高校生になった春の日、丈とヤマトはめでたく恋人になった。お互い長い…
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キスの日
キスの日。そんな日があることを知ったのはSNSのトレンドからだった。気になってタップしてみると様々なキャラクターの創作イラストで溢れている。もしかしてそういう類だけの話なのかと思って検索してみたところ、しっかりと由来があるようだった。「何調…
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ずるずる片思い
「光子郎、高校受かったらしいね」そう話した丈の口から白い息が漏れて消えていく。冬に比べれば随分暖かくなったと思ったが、春と呼ぶにはまだ早いらしい。両手を温めるように持った温かいお茶を、ヤマトはひと口飲み込んだ。「らしいな。太一から聞いたよ」…
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朝
窓から差し込む光が眩しさに光子郎はゆっくりと瞳を開く。うつらうつらと揺れる思考と重たい体の原因は仕事のせいだろう。昨日も早く帰ろうと頭の中で最重要タスクとして掲げていたが、他社とのやり取りや困っている社員のヘルプに自分の持っている仕事、様々…
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あの人の影響
「丈さん」恐る恐る声をかけた。それは僕の知っている中で最近の丈さんとは少し違う見た目をしていたから。おまけにここは色んな人が行き交う駅前。見つけてから声をかけるまでに丈さんと共通する点を何度も結んだからきっと合っていると思う。けれど世界には…
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桜が咲く前に
空っぽの部屋の中に静かに風が吹く。優しい陽だまりが茶色いフローリングからあぐらをかいた丈の足元を照らしていた。「なんもねぇな」後ろから聞こえた声に振り返ると、廊下から出てきたヤマトが丈の隣に座り込む。カーペットの無くなったフローリングは痛く…
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夜の道
11月の空はとても黒い。どこまでも遠く、吸い込まれてしまいそうな黒の中にいる月は良く目立つ。それは丸く、大きくなるほどに、強く存在を示す。そんな月も今日は生憎の三日月。細く薄い月明かりと等間隔に置かれた街灯の弱い光では、夜の道を歩くには少し…
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超えない一線
「あっ」高架下の日陰に隠れるようにた佇む一つの影。風で吹き飛んでしまいそうな細いシルエットが鮮明になると、少し跳ねた紺色の髪に黒縁の眼鏡が白い肌をコントラストに目立たせる。しゃがみ込んだ足の間に自身のパートナーを乗せ、何か楽しそうに話しなが…
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