城戸丈

ワンドロ「両片思い」

「春だなぁ」窓の縁にもたれかかって外を眺めていた太一がボソリと呟いた。モニターから目を離して外に目を向けると、校門前の桜が少しずつ花開いていた。「そうですね。最近、暖かくなってきましたし」「そうだなぁ」光子郎の言葉に太一は上の空な返事をする…

窓から差し込む光が眩しさに光子郎はゆっくりと瞳を開く。うつらうつらと揺れる思考と重たい体の原因は仕事のせいだろう。昨日も早く帰ろうと頭の中で最重要タスクとして掲げていたが、他社とのやり取りや困っている社員のヘルプに自分の持っている仕事、様々…