夏の日の目撃者 - 2/2


『珍しいこともあるんですね』
「だろ?俺もびっくりしてさぁ」
パロットモンを無事にデジタルワールドに送り返すことが出来た太一は、ヒカリと合流するために光子郎が表示してくれた位置情報を頼りに歩いていた。インカム越しからはキーボードを叩く音と一緒に光子郎の声が聞こえてくる。
「頑張れってさ、あんまり言われねーじゃん」
『まぁそうですよね。世の中の大半の方はデジモンなんて見たことないでしょうし』
突然現れて暴れるデジモンも、それを止めるために戦う選ばれし子供達のパートナーデジモンも、一般人からすれば同じ「化け物」に見られても仕方なかった。そのせいで昔は色々と問題になって大変だった。
「なんかさ、すっげー嬉しかったわ。ありがとうって言葉もいいけどさ、頑張れって言葉は俺たちの事を分かってないと言えないだろ?」
『過去に僕たちの事を見たことがあるのでしょうか』
「・・・だとしたらどこかで会った事があるかもしんねーな」
太一達はデジモンのため、この世界のために戦っているが、そんなことを知って理解してくれる人なんて早々いない。だからと言って理解してほしいわけではないが、自分たちの今までの戦いが誰かの記憶に残っているのだと思うと嬉しさがこみ上げてくる。
「太一、嬉しそうだねぇ」
アグモンが太一を見上げてニコニコと笑った。
「まぁな。・・・なぁ、アグモン。ヒカリと合流したらご飯食べに行くか!久しぶりに美味いモンでも食おうぜ!光子郎もどうだ?」
「美味しいご飯!?」
太一の言葉に目を輝かせたアグモンと対比するように、インカム越しの声は『え゛っ゛』と声を漏らす。
『別に構いませんが、さっきのデータをまとめないと・・・』
「んなもん後でも大丈夫だろ!それか、キリのいいところで切り上げて来いよ」
『簡単に言いますね・・・』
半分呆れながらも聞こえてくるタイピングの音はさっきより早く聞こえてきた。スマートフォンの画面を見ると共有された位置情報がもうすぐ傍まで近づいている。
「よし!まずはヒカリと合流だ!行くぞアグモン!」
「おう!」
先に走り出した太一を追いかけるようにアグモンが飛び跳ねるように走り出す。
照り付ける太陽と真っ青な空は、まるであの時を思い出させるような綺麗な空だった。

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