クリスマス - 2/2

 

クリスマスを盛り上げるために飾られていたイルミネーションが少しずつなくなってく代わりに、今年を締めくくり、来年のために嫌なことを忘れようとする人達で街は賑やかになっていく。
クリスマスに何も出来なかったその代わりに、と選んだバルでカルパッチョ、スペアリブ、アヒージョ、とひたすら横文字の料理を並べて酒を飲む。段々とその横文字は唐揚げ、枝豆、焼カレーとなじみ深いものへと変わっていく。
この際腹に入れば何でもよくなって、並んで酒を飲んで話が出来ればそれでいいのだと思った。
一緒にいることが出来れば幸せなのだと思えた。


店を出ると冷たい風が火照った頬を撫でる。
あれが美味しかったから今度作ってみよう。
美味しかったあのお酒の名前、なんだったっけ。
久しぶりにこんなに飲んだ。
ちゃんと帰れるかな。

のんびりとした口調で言葉を交わしながら、ぶつかった肩を離さないように手を繋ぐ。指先は冷たいのに温かく感じるのは酔っているせいだろうか。
「あっ」
近くに人がいれば振り向いていただろう。そんな大きな声を上げて丈は立ち止まった。

「どうした?」
「渡さなきゃいけないものがあったんだ」

そう言ってコートのポケットの中を探る。
酔っぱらってどこかへ失くしていない事を祈りながら丈を待った。
「そういうの、大丈夫だって言っただろ」
「本当はクリスマスに渡したかったんだけど、僕のせいで渡せなかったし。それにこれは、どうしても今年中には、いや、今日には渡したかったんだ」


そう言って取り出したのは黒い小さな箱。
丈の手の平にすっぽりと収まるそれを、回らない頭を回して、ヤマトは目を見開いた。
「お前、それ」
「そもそも、こんなところで渡す物じゃないんだけど」

ヤマトと向き合うように立った丈は宝物を見せるように近づいて、小さな箱をゆっくりと開ける。
紺色の布に包まれた銀色の指輪が街の光に反射して強く輝いた。

「今まで沢山迷惑をかけたし、一人にしてしまうことが多かった。クリスマスだって一人にさせてしまった、酷い恋人だと思う。それでも一緒にいてくれたヤマトと、僕はこれからもずっと一緒にいたい。一緒に幸せになりたい。だから」

「僕と、結婚してください」

言葉を飲み込むのに2秒かかった。
夢かと思うには頬がヒリヒリして、目じりが熱い。
感情が頭の中で渋滞して、やっと絞り出せたのは小さな声だった。

「俺でよければ」


零れる涙を手で拭かれ、抱きしめられる。
優しいぬくもりと匂いに手を伸ばして背中に回せば、頭を優しく撫でられる。

これ以上の幸せを、俺はきっと一生忘れないだろう。

 

 

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