クリスマス - 1/2

大人になっていくほど、子供の頃のように楽しめなくなることは多い。

 スーパーに陳列するお菓子を容易く買うことが出来る頃には、お菓子そのものを食べなくなってしまう。広くて何でもあった公園は小さく寂れて見えてしまう。巡る季節の中で夜も眠れないほど楽しみだった事も、これからもこうやって楽しむことが出来るのだと思っていた事も、気づけば過去になっていく。

一年という長い時間があっという間に過ぎ去り、今年が残り数日で終わる冬。
あと残り何日で終わるんだろう、だなんて考えているその日がクリスマスだと気付いたのは大学からの帰り道だった。
今更スーパーに寄ってそれらしいものを買う気力もなく、冷たい風に急かされながら真っすぐ家に帰った。

 誰もいない部屋の静けさが心地悪くてテレビを付けると、クリスマスに関連したゲームに挑戦する芸人達の姿が映る。良くも悪くもうるさいテレビの音をBGMに冷蔵庫にあったもので適当に晩飯を作って食べる。
白だしが良く効いてて美味しかったが、無心で作ったせいで配分なんて覚えてない。

携帯を手に取って通知を確認するが、やってきてるのは大学の友人だけで、期待したあいつからの通知はない。

医大生に行事なんて関係ない。

最後に会った時に愚痴っぽく呟いていた声を思い出す。あの日はまだ厚手のジャケットが必要ないくらい温かった頃だっただろうか。
クリスマスだろうが関係なく今日も慌ただしい一日を過ごして、家に帰っても休むことなく勉強に励んでいるんだろうか。
きっと今、連絡をすればすぐに返ってくるだろうし、「会おう」と言えばすぐに会いに来る。
随分と恋人思いな恋人を、自分の事を後回しにしてやってくると分かっていて連絡なんてできなかった。

打ちかけた文字を消して携帯を閉じる。
今日は冷えるからさっさと風呂に入って寝よう。

大学生の一人のクリスマスなんてこんなものだと、あいつは忙しくて会えないのは仕方ないことだと、そうであっても一緒にいたいと誓ったのだと、自分に言い聞かせながらぬるいスープに口を付けた。